郵政省と民間14社、衛星TVでネット通販−カタログ送信、見ながら注文。

 郵政省は年末に始まる放送衛星(BS)の「衛星データ放送」とインターネットを組み合わせた新しい電子商取引システムを松下電器産業、日本電信電話(NTT)グループやコンビニエンスストアチェーンと共同開発する。コンビニが家庭のテレビにデータ放送を通 じて買い物情報を流し、利用者はテレビを見ながら簡単に商品を注文できる。商品は最寄りのコンビニが宅配する。デジタルテレビをネット端末に利用することで、パソコン操作が苦手な人も手軽に参加できる。同省はパソコンを使わない電子商取引を普及させるための基盤とする考え。二〇〇一年度中の実用化をめざしている。(データ放送は「きょうのことば」参照) 同省は十四日にシステムの実用化をめざす官民共同の「高度サイバー流通 推進協議会」を設立。協議会には松下などのほかフジテレビジョン、ローソン、エーエム・ピーエム・ジャパン、DDIポケット電話、NTTドコモ、日本アイ・ビー・エム、富士通 、三菱商事など十四社が参加する。 開発するのは、特定のテレビ視聴者向けに専用情報を送ることができるデータ放送を使って商品の情報を各家庭のテレビに流すシステム。コンビニの在庫情報をもとに家庭のテレビにカタログの形で商品情報を送る。購入者はテレビ本体やリモコンのスイッチ操作で買いたい商品やサービスを注文できる。注文時はネットを経由するため、プロバイダー(接続業者)への接続料や通 信料金がかかる。 繰り返して注文すれば、新設する「データセンター」にそれぞれの顧客情報が蓄積され、利用者のし好に基づいた商品を優先して画面 表示することができるようになる。商品は利用者の家庭に最も近いコンビニが直ちに届ける。 松下、富士通 などはし好分析ソフトやテレビに適した閲覧ソフトを開発。NTTグループはデータ放送とネットの連動技術を担当する。代金の徴収はICカードを使ったBS、通 信衛星(CS)の料金徴収システムを活用する。 ネット電子商取引では、ほとんどの利用者はパソコンを使って注文することが多く、面 倒なキーボード操作が必要。パソコンに習熟していない人にはなじみにくいという欠点がある。 二〇〇〇年末にBSデジタル放送を使ったデータ放送が始まる。このため郵政省はテレビを利用した電子商取引を普及させるための環境が整うと考えている。 協議会は二〇〇〇年度中に首都圏の十店舗程度のコンビニで実用化実験をする。そこで問題があれば改良したうえで、BSやCSを使った買い物チャンネルの標準システムとして民間放送業界や流通 業界に採用を働きかける。 BSデジタル放送用のテレビは今後三年弱の間に一千万世帯への普及が見込まれている。

2000/3/11
日本経済新聞
1面



テレビがネット端末に、データ放送で現実味増す−EC端末としても期待。


 家庭のテレビがインターネット端末に――。これまでイメージとして語られてきたデジタルネット時代の新しいテレビ像の実現が目前に迫ってきた。きっかけは年末から始まるBS(放送衛星)デジタルによるデータ放送。視聴者ニーズに応じ情報検索のほか物販やソフト配信など電子商取引(EC)の基盤となり、インターネットとの連携も進む。受信機から送受信機に脱皮するテレビの競争力は、人とのインターフェースや操作性がカギを握る。  「双方向のデータ放送は電子商取引の有力な基盤。そのマーケットは見過ごせない」。東芝で放送機器を手がける情報・社会システム社デジタルメディアシステム部はこのほど、データ放送型ECのソリューション事業に乗り出した。  BSデータ放送を計画する九社から放送設備を約三十億円で受注、次いでデータ放送上でのEC事業を計画する物販会社やコンテンツ保有企業向けにECシステムの構築から運営代行、コンサルティングまで幅広く手がける。 14社集い技術開発  松下電器産業、日本電信電話グループ、富士通、日本アイ・ビー・エム、フジテレビジョンなど民間企業十四社は、郵政省の音頭で先月十四日に設立された高度サイバー流通 推進協議会に参画した。データ放送上でのECに必要な用途技術の開発実験が目的だ 。 データ放送はデジタル放送受信機を介して、テレビ画面に消費者が求める情報やコンテンツを有料・無料で配信する。消費者は受信機を電話線やネットにつなぎ、商品の注文や決済ができる。  各社が放送型ECに熱い視線を注ぐのは、ECやネットの窓口がパソコンからテレビに広がるためだ。「テレビがネット端末になればパソコンが苦手な消費者も利用でき、ECの普及を決定づける」(東芝デジタルメディアシステム部の片岡勉部長代理)。パソコンの呪縛(じゅばく)からの開放が普及の起爆剤になることは、NTTドコモのiモードに代表される携帯電話のネットサービスが証明している。 絵や音より操作性  データ放送の場合、視聴者が情報を受け取る仕組みはあくまで放送だが、テレビでネット上のサイトを閲覧するサービスも動き出した。NTTグループのマルチメディア事業会社、NTT―MEはテレビを使って簡単なネット利用ができるサービスを二月から始めた。メールを利用するにもテレビ画面 上の文字表示から字を選ぶ仕組み。  放送やネット上の情報をいかに容易に受け取り、発信できるか。ネット端末化するテレビに求められるのは操作性。メーカー各社は画質や音質を軸に競争してきたが、今後は操作性が重要な要件になる。 パソコンはノウハウ  「ビジネスマシンとして発展した今のパソコンの限界は認識している。しかし、培ったソフト、CPU活用ノウハウがモノを言う」。三月までパソコン事業を手がけ、このほどソニーの本社COO(最高執行責任者)としてエレクトロニクス事業全般 を統括する安藤国威副社長はこう力説する。  ソニーは二〇〇一年にも家庭内のAV機器をテレビを核にネットワーク化、集中制御すると同時に外部のネットサービスをテレビを通 じて利用できるデジタル家電システムを商品化する。開発で最も重視しているのが、実際に消費者が接するリモコンと操作画面 のレイアウトという。  パソコンは使いこなせれば消費者ニーズを満たす便利な道具だが、「テレビのチャンネルを変える程度の容易さで多様な機能が利用できないと幅広く普及しない」(高篠静雄ソニー専務)。現在のパソコン上のソフトや機能を一般 消費者向けに翻訳し、いかに組み込むか。デジタル時代のテレビやリモコンを決定づける多機能性と容易性の両立に、メーカー各社は総合力を結集し始めた。

日経産業新聞
2000/4/13
5面



ネット配信・デジタル家電、課金や消費者保護統一−郵政省、新たに統合協議会。


 郵政省はデジタル時代に通信・放送が融合することを踏まえ、課金方法など技術規格と消費者保護ルールの統一に乗り出す。ネット配信やデジタル家電など分野ごとに異なる規格や商慣行ができると、機器開発コストが高止まりしたり、消費者保護の仕組みが定着しにくかったりすると判断した。十八日に個別 分野ごとに設けた官民の協議会を統合する新組織を発足させ、情報技術(IT)時代のインフラ整備を急ぐ。 郵政省はこれまでネットを活用したゲーム配信や電子レンジなどに通 信機能を持たせたデジタル家電など分野ごとに四つの協議会を設け、消費者保護などの商慣行や技術規格の標準化を進めてきた。しかし通 信と放送の融合時代に分野ごとにバラバラの規格や商慣行が乱立すると、ITによる効率化を妨げかねない。 このため同省は四協議会間の上部組織として「通 信・放送融合技術・サービス開発協議会」を設立する。郵政省のほかNTTグループ各社やソニー、松下電器産業、三和銀行など五十二社も参加する。 協議会は、例えば音楽ソフトなどを配信販売する際の課金方法を、電子レンジにネット機能を組み合わせ料理手順書を買えるデジタル家電にも応用できるように規格や仕組みを調整する。閲覧ソフト(ブラウザー)の基本技術開発でも、デジタルテレビからデジタル家電まで汎用性の高いソフトの作成を目指す。 さらに各種の技術規格や消費者保護ルールの統一を進めるうえで、障害となる法制度の改正や必要な財政的支援措置などの要望も四協議会から吸い上げる。 協議会で得られた結論を国のIT発展の基本戦略を練るIT戦略会議(首相の諮問機関)に技術や機器の標準案として提言する。税制や財政支援、法律体系の見直しも求めていく。

2000/7/17
日本経済新聞
3面



通信・放送融合の技術・サービス開発で統合協議会発足,政府のIT会議に提言へ

  郵政省と民間企業約60社が参加する「通信・放送融合技術・サービス開発協議会」が,2000年7月18日に発足した。郵政省がオブザーバーとなって通 信・放送融合時代の技術やサービス開発を検討している五つの民間協議会の「統合協議会」という位 置付けになる。五つの協議会間の情報交換や技術規格の統一,シナジーの創出などを狙う。  統合協議会の傘下に入るのは(1)情報家電とインターネットの融合を図る「情報家電インターネット推進協議会」,(2)高速ネットワークを使ったASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)事業の普及・促進を図る「高度ASP実験推進協議会」,(3)情報家電とコンビニエンス・ストアを組み合わせた効率的な電子商取引(EC)の実現を目指す「高度サイバー流通 推進協議会」,(4)ネットワーク・ゲームなどのサービス開発を目指す「ネットワーク・エンターテイメント実験推進協議会」,(5)音楽や映像などのディジタル・コンテンツ流通 の仕組み作りを目指す「コンテンツ流通プラットフォーム実証推進協議会」――である。統合協議会には郵政省のほかに,家電メーカーのソニーや松下電器産業など,通 信事業者のNTTドコモやDDI,日本テレコムなど,放送事業者のNHKやフジテレビジョンなど幅広い業界から約60社が参加した。郵政省は統合協議会の設立によって五つの協議会の成果 や要望を集約し,政府のIT戦略会議(首相の諮問機関)などに提言を行いたい意向である。具体的には,通 信・放送融合時代におけるディジタル放送受信機(STB)や携帯電話機など情報家電全般 にわたる技術仕様の統一や,情報家電を使ったサービス仕様などに関する見解や要望をまとめ,国の施策への反映を狙う。

2000/7/24
日経ニューメディア


 データ放送とインターネットを組み合わせたEC実験,サイバー流通 協議会が9月にも

 通信・放送ネットワークと流通機構を融合した新たなビジネス・モデルの開発を目指す「高度サイバー流通 推進協議会」は,データ放送とインターネットを組み合わせた電子商取引(EC)サービスの実験を2000年9月にも開始する。首都圏のコンビニエンスストアと一般 家庭を対象にして2001年3月末まで行う計画だ。実験内容は,CSデータ放送や地上波データ放送を使って商品情報を家庭のテレビ受像機に流し,視聴者がテレビ画面 を見ながら商品を注文する。注文した商品は最寄りのコンビニから宅配されるというものである。実験終了後は,データ放送とインターネットを組み合わせたオンライン・ショッピングの標準システムとして,日本だけでなく海外の流通 業界や放送業界に売り込む考えだ。  今回の実験はエーエム・ピーエム・ジャパン(AmPmジャパン),JSAT,フジテレビジョン,松下電器産業,インフォシティの5社が中心になって行う。いずれも,サイバー流通 協議会の下部組織である「データ放送連動型サービス・ワーキング・グループ(WG)」のメンバーである。実験ではJSATがCSデータ放送の仕組みを,フジテレビが地上波データ放送の仕組みを提供する。家庭に提供する商品情報,コンビニからの在庫情報,利用者の登録データ(名前,住所,電話番号など)やコンビニへの発注情報などを管理する「データセンター」は松下電器が中心になって構築する。実験に参加するコンビニは,東京都の特定の区内にあるAmPmジャパンの約10店舗になる。利用者が購入した商品の決済は,現行のAmPmジャパンの代金引き換えシステムを利用する案が有力だが,クレジットカードを使ったオンライン決済の仕組みも導入する可能性がある。 なお,サイバー流通 協議会は,郵政省の肝いりで2000年3月中旬に設立された。今回の実験を行う5社のほかに,宇宙通 信(SCC),NTTドコモ,NTTコミュニケーションズ(NTT Com),NTTデータ,DDIポケット電話,富士通 ,ローソンなど10社が参加している。

2000/4/10
日経ニューメディア